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こんにちは、こふっちゃんです。
先日後輩からドライブに誘われまして、折角ならと廃墟探索を提案したところ食いついてくれたので、前々から行きたかった場所に向かいました。今までは一人での探索がほとんどでしたので、新規ファンが増えてくれるのは助かります。私が廃墟の話をし過ぎて洗脳されただけかもしれませんが。



今回訪れたのは、広島県福山市にある本郷温泉。
軽く歴史を説明すると、本郷町にある大谷川沿いに広がる小さな温泉街で、上流にある大谷鉱山という場所から冷泉が見つかった事から始まったとされます。鉱山近くに湧く温泉が身体にいいという事で、大変多くの湯治客でにぎわったそうです。1960年代は12件の温泉宿が出来るなど、広島県最大級の温泉地として有名になり、近くの松永駅からも多くのバスが出たとか。
1970年以降、レジャーの多様化により徐々に衰退し、2006年の「末吉旅館」を最後に全ての旅館は閉鎖してしまいました。



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山奥の細い県道を進むと、桜並木の綺麗な道が現れます。しばらく走ると建物を発見しましたので適当に車を止めて、取り敢えず建物周辺の観察から始めます。








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建物は蔦に覆われていますが、人の出入りできそうな感じだったので、更に奥に入っていきます。廃墟探索は汚れていい格好がベストですが、今回は緊急探索のためやや軽装。虫や野生動物が少ない秋や冬が探索もしやすいです。




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旅館で見るような、丸い窓を確認。その下にはレトロなパチンコ機。古い廃墟の宿によくある、ゲームコーナーの残骸でしょうか。詳しい人ならこれだけで年代が分かりそうです。




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廊下のようですが、当時から土足で移動しても良かったみたいです。




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資材が置かれた部屋。照明器具などが放置されています。一階部分は宿泊するスペースはなさそうです。



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二階に上がる階段は、崩れ落ちてますが耐久性があり登れそうです。一段ずつ慎重に進みます。




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二階に上がりました。近くの部屋には畳の跡があり、ここでお客さんは泊まってたのでしょう。かなり年季の入った外国人女性の写真が取り残されています。カーテンも今や切れ切れです。




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おそらくレコードだったのでしょう。ヒントが無く特定は難しいです。




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他の部屋も観てみましょう。使用された椅子が積み重ねてるだけで、特に残されたものはありません。床がギシギシと音を立て、底を抜けそうな恐怖を襲います。



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最も奥にあった部屋、ここが一番敷居が高い部屋みたいですね。他より3倍くらい広いんじゃないでしょうか。ここも特に残されたものはありませんが、居心地の良さを感じました。


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唯一残された椅子。中々絵になりますね。


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当時の新聞を見つけました。昭和35年、本郷温泉の全盛期と言われた1960年の新聞です。今まで廃墟で見つけた新聞では最古という事もあり、個人的にテンションのピークを迎えます。廃墟探索というのは、こういったタイムスリップを体験できるのも魅力の一つです。



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奥は崩壊の危険があり近づけませんでした。全体を通すと、古き良き温泉宿の雰囲気が漂います。おそらく建物も1960年代に建てられたものだと推測できるので、崩れ落ちるのも時間の問題でしょう。



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一階に下ります。さっきの大広間の真下は作業スペースのようで、木材などが放置されています。



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噂通り、趣ある室内を拝めて、この時点で満足感がありました。廃墟初心者である後輩も楽しそうに撮影をしてくれて、やっと仲間が出来た・・・と、遠目から思わず目が潤んでしまいました。正直ここで撤退しても良かったですが、反対側に残る建物がどうしても気になります。



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こちらは先ほどと違い、コンクリートの建物ですね。木造の宿泊棟が老朽化し、新たに増築したと考えたらいいでしょう。こちらも中に入れそうでしたので、行ってみました。


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渡り廊下から一枚、やけにタイヤや車関連の道具が多い印象。オーナーの趣味だったのか、タイヤが幾重にも道をふさぎます。人の気配は無さそうだったので、探索を続けます。



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当時のパンフレットがあり拝見。やはり先ほどの建物は使用されていませんね。ここの名物は巨大水車がある露天風呂だとか。営業当時のパンフレットを読めるのは中々貴重ですが、廃墟の物は持ち帰らないのが常識です。元あった場所に戻しておきます。



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恐らく玄関だった場所。やけに傘や靴が沢山ありますね。温泉宿にしてはカラフルな傘ばかりで、靴も運動靴が目立ちます。宿を閉業した後のものがほとんどでしょうか。



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ここで、後輩があるものを見つけます。廊下に残された「介護用おむつ」の袋。年季が入ってますが、お客の出入りがある玄関に大きく三つ残されていました。文字通り解釈すれば、オーナーか、その親を介護する必要があり、止む無く閉業したという可能性が生まれました。


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玄関隣にあった、生活感がある部屋。
何気なく撮影を行ってると、想像を超えたあるものが見つかりました。














遺影写真」と「位牌」です。





無残に放置され、物悲しそうな表情を映す遺影写真を見つめ、私達はこの宿が抱えていた闇に踏み入れてしまったと感じ、これ以上の散策をどうするか悩みました。軽いノリでスタートした、初心者向けの探索のつもりでしたが、思った何倍もヘビーな事情、先ほど見つけた介護用のオムツと関係するのか。私達は更なる情報を求めて先へ進みました。




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途端に怖くなる廊下。真昼ですが、明かりはあまり届きません。



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広い部屋を見つけました。そこには、卓球台が一つ。こちらも温泉宿では珍しくない卓球施設に見えましたが、付近にあるものが残されていました。




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個人名が書かれてたため写真はありませんが、参考画像のような布が放置されてました。私も卓球部に所属してたのですぐに分かりました。これは大会に出場するときに背中に付ける布です。
学校名は福山市の中学校というのが分かるだけで、意図的に消された跡がありました。つまり、ここには中学生の男の子が暮らしていたことが分かったのです。介護の話に戻すと、中学生の子供なら、比較的若い夫婦がおり、介護とはその親というのが分かりますね。


調べると、付近に中学は二校。どちらも距離があり自転車通学としても非常にしんどい坂道が続きます。学校では卓球部に所属し、家でも当施設?の卓球台で練習できたという、まぁある意味贅沢な練習が出来ていたというのが分かります。




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近くにファミコンソフトが残されてました。ファイナルファンタジー4です。発売は1991年と、いきなり時代が変わるものが見つかります。中学生の彼のものか、お父さんのものか、書かれた名前はこの家の人のものではありません。借りたものなら返してあげてね。


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調理場。煙のように消えたかの如く、そのままの状態が取り残されてます。宿のお皿にしてはやけに生活感ある物ばかりです。居住スペースも近いので、閉業後もここで夕食などを作ってたのでしょう。ここも不気味だったのであまり詮索はしませんでした。



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お風呂を見つけました。その造りから、宿泊者用の湯舟のようです。ただ、パンフレットに書かれた水車付きのようではないですね。大人三人位で一杯なほど小さいです。



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二階に上がります。



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部屋番号が書かれてます。ここが客室で間違いないかな。


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特に変化がない客室ですが、違和感を抱えました。あのハンガーの量は何だろう。湯治で何泊もしたお客さんが残したものだろうか。ほかの客室も似たものがあります。ここは閉業後、別の使い方をされた場所なのでしょうか。


ここで、後輩から声をかけられます。奥に部屋があるようです。行ってみましょう。












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子供部屋です。

やはりここに子供が住んでたんです。ただ男の子にしては、らしきものが残されてません。もしかすると、お兄ちゃんと、妹、二人兄妹だった可能性があります。奥のポスターはTMレボリューションの西川兄貴ですね・・・好きで貼るとしたら女の子でしょう。しかしこの部屋、先ほどの客室から離れた場所ではありません。普通一緒のフロアに作るはずがないと思いますが。



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若いな、しかし。



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隣部屋は物が少ないですが、学ランが放置されてます。周辺は高校の教材。お兄ちゃんが高校までこの部屋を使い、先に家を出たので、妹さんもこの部屋を使いだしたのでしょう。ここに来て学ランが登場し、ある憶測が生まれました。放置された遺影写真やそのままの調理場、もしかするとこの一家は夜逃げをしたのではないか。しかし何故?子供の宝物や学ランを置いて家を去る理由があるのでしょうか。子ども達はそれを良しとしたのか。この家で一体、何が起きたのか。




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ベランダから、先ほどの木造の客室が見えますね。下の瓦は今にも崩れそうなのに、上の瓦は何故か綺麗なんですよね。老朽化して放置するなら、瓦を張り替える理由も無いように思うのですが・・・。



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客室に残っていた謎のビニール。ハンガーがあり、先ほどと同じく長期滞在した人のものなのか。様子を見るに、キャンプ用のテントに見えますね。
ここは最後の建物にあった部屋なのですが、数字が記された客室ではなく、ここには人の苗字が書かれていました。おそらくですが、温泉宿を閉業した後に、アパートか寮に再利用されたのでしょう。付近に大学もあり、ハンガーも当時の寮生が残したものとしたら憶測と一致します。


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殺風景ですが、ベッドが置かれた部屋。新たな収入源としてアパート業を始めたと考えられます。どのタイミングまで続いたのか分かりませんが、彼らはこの家が介護に追われ、果てに夜逃げしたという事実に気づきながら生活をしていたのでしょうか。深刻な問題を抱えたままじゃ限界を感じた一家が、ある日突然いなくなったとするなら、寮生もたまったもんじゃないでしょう・・・。



大体の部屋を回りながら、もう一つの違和感を抱えていました。先ほどの位牌を見るに、仏教の家系だと思ってましたが、時折キリスト関連の資料を目にしていました。子ども部屋に積まれた聖書の本も、やや不気味なテイストだったのですが、最後の部屋に、あるものを見つけます。







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事前調査の際、ここが「エホバの証人」の会合場所に使われたという噂があると記されていました。あくまで噂だと流してましたが、これを見つけた時は流石に鳥肌が立ちましたね。



エホバの証人は、確かにキリスト教の系列ですが、ちょっと異質な団体なんですよね。日本に21万も信者がいるエホバですが、カトリックやプロテスタントが使用する聖書ではないものを使い、キリストの教えを否定する内容が書かれていたりします。また輸血禁止や洗脳、脱退が出来ないとカルトじみた噂もあり、本家キリスト教からも完全につながりがありません。



この家に起きた一連の流れにエホバの証人は関わっているのでしょうか。ここに住んでた人というのも、もしかすると信者だった可能性もあります。残されたものから読み取れるものはこれで全てです。本郷温泉は2006年を最後に全滅しました。ここに残る資料から、家族が消えたのも、2006年ごろでした。介護、兄妹、寮、そしてエホバ。ここで出た答えはあくまで憶測でしかありません。




私達はただ、ここにいた家族が今もどこかで幸せに暮らしていることを願うしかありません。












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約2時間の探索を終え、私達はへとへとになって車へ戻りました。廃墟初心者が踏み入れるにしてはヘビーな場所でしたが、お互いに考察し合いながら進む感覚は新鮮で、印象的な廃墟の一つになりました。機会があればまた二人で廃墟回ろうぜ、なんて話しながら撮影した写真を振り返っていました。すると、後輩が手を止めて、ある写真を私に見せてきたのです。





「なんか、ここに誰かいませんか?」

















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